2010年11月21日

フェラーリとツェッペリンと温泉

Filed under: blog — Nishitani @ 10:18 AM

 BOPの40周年記念コンサートからもう2週間がたった。
函館で多くの人と出会い、自分の青春時代の1コマを回想して東京に帰ってから色んな事があった。
Kitkatから頑張る受験生へむけた“おみくじ”風応援メッセージを書くよう頼まれたり(2011年1月5日発売予定)、
PHP研究所から書籍の出版を依頼されたり(いいものを書くぞ!)、母校である高知県の土佐高校で講演を頼まれたり(超緊張しました)、インフルエンザの予防接種をしたり(??)、とにかく色んな事があった。

 土佐高の講演会は今回が2回目だが、前回同様相当プレッシャーがあった。お世辞にも優等生とは言えない自分が多くの後輩達の前で何を語ればいいのだろう。
そもそも、講演会があった11月13日、自分は土佐高で高2のとき同じ日に大阪にいた。
実は秋の学園祭のあと、密かに思いを寄せていた年上の女性(10歳も)に失恋して、傷心の身で男になるべく京都・大阪・神戸と家出をしていた。大阪ミナミの道頓堀、宗右衛門町の富士という名前のキャバレーで住み込みで働いていた高2の自分は当時いったい何を考えていたのだろう?そうした自分に向けた素朴な疑問から出発した講演会だったが、緊張していたにもかかわらず、思いのほか、生徒達の反応は良く好評だったのでホッとした。かっての生徒のそうした失敗談をホールの一番後ろの隅で立たれてニコニコ笑いながら聞いて下さった校長先生、本当にありがとうございました。僕を呼んで下さった進路部長の岡松先生、とても穏やかで物静かな先生なのに登山部の顧問をしておられて、しかもその登山部が全国1位になったというのだからすごい。さすが母校です!!(ところで何が1位なのだろう?)
ということでとにかく色んな事があった2週間でした。

 今日は久しぶりの休日。そして抜けるような晩秋の青空。東京、渋谷からでもくっきり見える富士に誘われて(こちらは本物)フェラーリを走らせた。首都高から中央道に入り1時間も走ると甲府盆地が視界に入る。猛暑の夏の影響で紅葉は例年より遅い。澄み切った空気の中で、木々の葉の一枚一枚がリアルに見える。BGMはツェッペリン。とくにⅣがいい。もう何度聞いたかわからない位に繰り返し聞いたⅣだが、F430スパイダーをオープンにして聞くと新鮮だ。BlackDogからRock&Rollへとドライブするツェッペリンのパワーがビシビシと伝わってくる。フェラーリにはツェッペリンが似合う。ロバートプラントのハイトーンのヴォーカルがエンジン音とコラボし、ジミー・ペイジのギターのリフが気品を添える。ボンゾーのドラムは破壊的で下半身を絶えず刺激する。ボンゾーがホテルで謎の急死をしてバンドが突然解散してから30年が経つというのに、その音楽性は全く古くなっていない。今の低調な音楽シーンの中でますます輝きを増している。

 中央高速のサービスエリアは釈迦堂がいい。こじんまりしたエリアだが、甲府盆地の向こうに見える南アルプスは太陽の光に反照してごつごつとした岩肌をみせている。まるで、太古の思い出にふけっているかのようだ。サービスエリアでの食事は天ぷらそばに限る。簡素なかきあげとネギをのせただけのそばだが、ジャンクで素朴な味と南アルプスの雄大な眺めがミスマッチして、旅の情緒をかきたてる。
 
 ゴールは奈良田温泉。南アルプスの山深い秘境にあるこの一軒宿は僕のお気に入りの宿だ。
今から1300年前、孝謙天皇がこの地に遷居した際に開湯した温泉で、早川と南アルプスの山々に囲まれてひっそりと僕を迎えてくれる。団体客はとらないこじんまりした家族経営の宿で、宿の主人自らが作った総桧風呂がすばらしい。彼はハンターでもあり、山の猟が解禁になると愛犬を連れて、イノシシやシカを獲る。
食事は100%地産地消で近くの畑でとれたソバやコンニャク、山菜、エゴマ、やまめなどが出る。中でも僕の好物はイノシシ鍋でここで獲れるイノシシ鍋は絶品だ。これを食べていると、自分が太古の人類の狩猟採集生活にタイムトラベルした気になる。遠い人類の祖先とつながっている感覚が蘇る。
僕は確信を持って言えるのだけれど、人間の食の究極は海のものではなく素朴な山のものだと思う。
高村光太郎が生きていたら、きっと同意してくれるだろう。
山の空気は凛として寒く、静かに透き通っている。

2010年11月9日

Memories of You -Memories of Bop-

Filed under: blog — Nishitani @ 2:00 AM

 すみません。冬眠(夏and秋眠?)していました。
イレギュラーなニシタニです。

 前のblogにも書いたと思うんだけど、「バップ40周年記念コンサート」に行ってきました。晩秋の函館。
2010年11月6日、僕の青春の記念碑Bopも40周年を迎えた。
企画は大塚君と曽根君。(大塚君は15年程前の僕の横浜校の生徒でした。)
コンサートはUKAJI氏のバリトンサックスのソロ。バッハの無伴奏チェロを思わせる通奏低音で70分余り吹きまくりのライブの間、僕の心は34年前初めて北海道へ旅し、バップの近くの公園で1週間寝袋だけで生活していた時へとごく自然に飛ぶ。その1週間昼間はバップでコーヒーを飲み、ジャズを聴き、詩集を読んでいた。夜は公園で寝袋で寝ていたが、ある日、昼過ぎから雨になり、どこで寝ようかと思案していた僕をバップのマスターは快く店に泊めてくれた。
「うちは狭くて、荷物がいっぱいでキミを泊めてあげることはできないけど、店の中なら全然かまわないから泊っていけばいい。せめて、雨風でもしのげるから。」
そう言ってマスターはどこの馬の骨ともわからない、うさんくさい若者を大切な店に泊めてくれた。おそらく彼はその時のことを覚えていないと思う。人に親切にすることがごくごく当たり前の人なのだ。

 夜中真暗闇の中、昼間はあんなに音を鳴らし続けていたパラゴン(JBLのどでかいスピーカー)もまるでひっそりと寝てしまったよう!何台かあるアンティーク時計のひとつ、ふたつだけが静かに時を刻んでいる。とても優しい闇だ。そして眠りにつく。朝、シャッターの開く音が聞こえる。続いて、マスターが階段を降りてくる音。そして、水道とガスの音。マスターはロールパンにハムとレタスをはさんだサンドイッチを僕に作ってくれた。一宿一飯。仁義の世界ではないけれど、これはやはり生涯の恩義です。その一夜のバップのたたずまいは僕の世界で今もひっそり生き続けている。クリフォード・ブラウンのMemories of Youのような懐かしい響きだ。

P.S コンサートのあとのDukeでの打ち上げパーティーは最高でした。こんなしみじみとした時間の流れるパーティーは久しぶりだ。元函館駅長の松原さん、フリージャズ評論家の副島先生、翌日朝6時に集合して駅伝マラソン大会に出場すると言っていた小林さん。いろんな人と話ができた。すべてバップがなければ、とても知り合うことのないような人達ばかりだ。もちろん、とてもいい意味で。映画「海炭市叙景」制作実行委員会の菅原さんにも会った。たしか、12月8日に封切予定の映画で僕はもちろんまだ見ていないのだけれど、とても期待できる映画だ。函館の貧しくて厳しい環境の中で生きている家族の姿をとてもリアルにとてもリリカルに描いているらしい。正直いって最近の日本映画は僕の知るかぎり、全くもって興味が持てないものばかりだった。これにはもちろん僕の勉強不足があるのだが、久々に何かを予感できる映画が出てきたと思う。変な自信だけど僕はこの種の予感には昔からかなり実質的な自信がある。この何ヶ月間かどんなライブコンサートに行っても、どんな映画を見てもどんな芝居に行っても表層的な笑いやテクニックやセンチメンタリズムしか感じなかった僕だが、今、何か新しいものの生まれる萌芽を感じ始める事ができた。そんな転機をくれた11/6だった。