2010年11月9日

Memories of You -Memories of Bop-

Filed under: blog — Nishitani @ 2:00 AM

 すみません。冬眠(夏and秋眠?)していました。
イレギュラーなニシタニです。

 前のblogにも書いたと思うんだけど、「バップ40周年記念コンサート」に行ってきました。晩秋の函館。
2010年11月6日、僕の青春の記念碑Bopも40周年を迎えた。
企画は大塚君と曽根君。(大塚君は15年程前の僕の横浜校の生徒でした。)
コンサートはUKAJI氏のバリトンサックスのソロ。バッハの無伴奏チェロを思わせる通奏低音で70分余り吹きまくりのライブの間、僕の心は34年前初めて北海道へ旅し、バップの近くの公園で1週間寝袋だけで生活していた時へとごく自然に飛ぶ。その1週間昼間はバップでコーヒーを飲み、ジャズを聴き、詩集を読んでいた。夜は公園で寝袋で寝ていたが、ある日、昼過ぎから雨になり、どこで寝ようかと思案していた僕をバップのマスターは快く店に泊めてくれた。
「うちは狭くて、荷物がいっぱいでキミを泊めてあげることはできないけど、店の中なら全然かまわないから泊っていけばいい。せめて、雨風でもしのげるから。」
そう言ってマスターはどこの馬の骨ともわからない、うさんくさい若者を大切な店に泊めてくれた。おそらく彼はその時のことを覚えていないと思う。人に親切にすることがごくごく当たり前の人なのだ。

 夜中真暗闇の中、昼間はあんなに音を鳴らし続けていたパラゴン(JBLのどでかいスピーカー)もまるでひっそりと寝てしまったよう!何台かあるアンティーク時計のひとつ、ふたつだけが静かに時を刻んでいる。とても優しい闇だ。そして眠りにつく。朝、シャッターの開く音が聞こえる。続いて、マスターが階段を降りてくる音。そして、水道とガスの音。マスターはロールパンにハムとレタスをはさんだサンドイッチを僕に作ってくれた。一宿一飯。仁義の世界ではないけれど、これはやはり生涯の恩義です。その一夜のバップのたたずまいは僕の世界で今もひっそり生き続けている。クリフォード・ブラウンのMemories of Youのような懐かしい響きだ。

P.S コンサートのあとのDukeでの打ち上げパーティーは最高でした。こんなしみじみとした時間の流れるパーティーは久しぶりだ。元函館駅長の松原さん、フリージャズ評論家の副島先生、翌日朝6時に集合して駅伝マラソン大会に出場すると言っていた小林さん。いろんな人と話ができた。すべてバップがなければ、とても知り合うことのないような人達ばかりだ。もちろん、とてもいい意味で。映画「海炭市叙景」制作実行委員会の菅原さんにも会った。たしか、12月8日に封切予定の映画で僕はもちろんまだ見ていないのだけれど、とても期待できる映画だ。函館の貧しくて厳しい環境の中で生きている家族の姿をとてもリアルにとてもリリカルに描いているらしい。正直いって最近の日本映画は僕の知るかぎり、全くもって興味が持てないものばかりだった。これにはもちろん僕の勉強不足があるのだが、久々に何かを予感できる映画が出てきたと思う。変な自信だけど僕はこの種の予感には昔からかなり実質的な自信がある。この何ヶ月間かどんなライブコンサートに行っても、どんな映画を見てもどんな芝居に行っても表層的な笑いやテクニックやセンチメンタリズムしか感じなかった僕だが、今、何か新しいものの生まれる萌芽を感じ始める事ができた。そんな転機をくれた11/6だった。